製作秘話 -ごはん鍋-
かわいさはそのままに、
機能性をさらに高めたい。
ごはん鍋はたいせい窯の中でも売れ筋の定番アイテムのひとつです。長年愛されてきたこの鍋を、この先ももっと多くの人に使って頂けるよう見直していきたいと思ったことがきっかけとなり 、リニューアルに着手しました。
持ち手の部分の見直し
持ち手の部分の見直し
料理中、もっと扱いやすくしたい。
ミトンや布巾を使って取っ手をつかむ際、少し持ちにくさを感じる点がありました。さらに中フタ、上フタ のつまみ部分も同様、まだ熱をもったフタを扱う際にやはり手間取ってしまう。直火にかけて熱する鍋はどのパーツも高温になるので安全に扱えることは重要でした。ぽってりとした丸いフォルムを生かしつつ、胴のアクセントにもなる取っ手部分を持ちやすく改良するにはどうしたらいいか。
取っ手のパーツの試作を繰り返す。
まず土を手でこねて粘土細工のように取っ手のパーツづくりを始めました。手に引っ掛かけてつかみやすいよう下向きにカーブを作る。そしてゆるやかに湾曲した胴の部分とパーツのカーブを合わせて胴と接着させる。最も気を付けなくては いけないのが胴も取手も、どちらかが乾燥してしまっていると縮んでしまいカーブが合わないので、どちらも乾かない様に細心の注意を払い同じ硬さで接着させる事が重要です。この工程はほんの少しの誤差でもうまく接着出来ない、もしくは取れやすくなる繊細な箇所 。何度も接着しては焼成まで行い、しっかり接着されているか、縮みや切れの確認を繰り返します。ようやく 安定した型の原型ができるまで 、作業は何日間にも及びました。
フタのつまみ部分の改良から、
フタ自体の改良へ
そしてフタのつまみ 部分に関しては、現状のものより高さを増すことで持ちやすくしました。しかし上フタに関しては従来のつまみより高くすることで、全体のフォルムが変わりバランスが崩れてくることが判明。高くしたつまみに合うようフタ全体の形状を変更する ため 、新たに 型とコテを一から制作しました。つまみの高さとフタの形状は全体のイメージ を左右する絶妙なバランスで保たれている為、ほんの少しの違いでも納得のいかないフォルムになってしまいます 。フタの 高さはもちろん、高さや丸みの形状、生地の重量や厚さを納得のいくまで型やコテを作り直しては幾度となく試行錯誤を繰り返しました。このように 今まで培ってきた技と感覚をフル回転させ、使いやすさと共に従来のかわいさを受け継ぐ仕上がりにたどり着く事が出来たのです。
おいしいごはんを追求するための穴
おいしいごはんを追求するための穴
もっと手軽においしい土鍋ごはんを。
土鍋で炊くごはんは美味しいとわかっていても、やはりまだハードルが高いと思っている人が多いと聞きます。手軽に、本当においしいごはんを食べて欲しい。それはごはん鍋を作っている窯元の使命でもあると思っています。そこで私たちは、ごはんの良し悪しを決めるのは「蒸らし」が重要であると考え、いかにうまく蒸らせるのかを探究しました。
二重蓋に着目する。
泰成窯のごはん鍋は二重蓋です。中フタと上フタの両方に吹き出し口があり、これは吹きこぼれを防止するためや、炊き上がりのサインを見るためにあります。しかし、蒸らすことが最も重要であればこの穴から蒸気が逃げてしまっているのではないだろうか?炊飯後に穴のないフタでしっかり蒸気を閉じ込めて蒸らせば一層おいしくごはんが炊けるはずでは?と気が付きました。しかし吹き出し口をなくせば吹きこぼれがおこるうえに、炊き上がりのタイミングもわかりません。これらを解消するための実験を始めました。
穴をふさいで炊いてみる。
まず穴なしの外フタと中フタを作り、「穴なし外フタ×穴あり中フタ」「穴あり外フタ×穴なし中フタ」の2パターンの炊き上がりの実験を開始。何度となく試食を繰り返した結果「穴あり外フタ×穴なし中フタ」の方が吹きこぼれも少なく、格段においしく炊き上がることがわかりました。
穴のない中蓋と、穴のある外蓋で理想のごはんに。
さらに外フタの穴から蒸気を逃すことで吹きこぼれ軽減のほか、炊き上がりのサインも確認することができました。この「穴あり外フタ×穴なし中フタ」の二重蓋で炊いたごはんは、従来の鍋で炊いたごはんと比べもっちりとした食感を味わうことができ、求めているごはん鍋にようやく辿り着くことができたのです。 そして、火加減や蒸らし時間を試行錯誤しながら何度もごはんを炊き、試食を繰り返し最もベストなレシピを作成。ご家庭でこれまで食べた事のないほどの「おいしいごはん」を味わっていただけるよう、お鍋と共にお渡ししています。